統計検定2級を取得 — AI時代に経営コンサルタントが統計を学ぶ理由
生成AIが普及した時代に、なぜ統計を学ぶのか。予測精度ではなく「意思決定への接続」という観点で、統計とAIの役割分担を整理します。
先日、統計検定2級を取得しました。日本統計学会公式認定の資格で、記述統計(グラフや表の正しい使い方と読み取り)と推測統計(推定・検定)の基本理解、集合・確率まで含む内容です。
2023年は生成AIが急速に普及し、「データサイエンスはAIに代替される」という言説も広がりました。そんな中で、経営コンサルタントが統計を学ぶ意義はどこにあるのでしょうか。
予測精度と意思決定は別物
ChatGPTのデータ分析機能(Code Interpreter)でPython分析を回す機会は私もあります。機械学習・深層学習は高い精度で社会の様々な領域で活用されており、これらを使うのに高度な統計知識は不要です。
ただし意思決定の文脈になると、AIには弱点があります。予測精度が高くても、経営者が感情的にも論理的にも納得できる説明を持たないことが多いのです。ハルシネーションの問題とは別の話です。
例えば「12月24日の日曜夜、繁華街の人流は平常比300%増」とAIが予測したとします。では自社は何をすべきか? 予測単体では「だから何?」で止まってしまいます。
「途中式」が経営判断を駆動する
統計とAIの違いは、結論に至る途中式の見え方にあります。深層学習はニューラルネットワークの内部で複雑な演算が行われ、何がどう作用して結論に至ったかが見えにくい。
一方、統計学では計算量こそコンピュータ依存ですが、途中式の段階で人間の意思と判断が介在します。「人流に効く変数を集約して、収入変数・祝日変数・気候変数と命名する。今回は収入変数が特に効きそうだ」といった具合です。
同じ「人流300%増」の予測でも、
- 「AIがそう算出しました」
- 「収入変数・祝日変数・気候変数で算出。特に収入変数が強く効いています」
では、後者の方が経営者は次の打ち手を考えやすい。「ならば収益率の高い高単価商品を投入しよう」「気候変数がマイナスなら、暖かい商品を出すという逆張りもある」と、具体的なアクションに直結します。
XAIとの関係
AIが意思決定に使えないという話ではありません。Explainable AI(XAI、説明可能なAI)の重要性は深層学習の研究者にも広く認識されており、LLMに統計的手法を使わせて解釈・説明を生成させるアプローチもあります。
しかし現状では、経営判断に必要な情報を提供するという観点では、経営と統計の両方を理解する人間が介在する方が、精度と納得感のバランスが取れます。
また、本稿は便宜上「統計 vs AI」の構図で書きましたが、実際には統計・機械学習・深層学習は隣接領域です。AIモデルの評価には統計知識が必須で、両者は補完関係にあります。
経営判断の現場では、AIの出力をそのまま使うのではなく、統計的な解釈を挟むことで打ち手が見えてきます。データの判断・活用でお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。